峠/司馬遼太郎

越後長岡の一藩士から郡奉行、町奉行、やがては家老、総督に立身し、幕末の藩政改革に尽くした河井継之助が主人公。

冒頭から継之助の苛烈な性格が伺える。
江戸遊学を藩に願い出るくだりも、わざわざ大雪の中で江戸に出発するくだりも、自分がこれと信じた事に関しては行動せずには居られないような人物だ。事なかれ主義に慣れきった周囲からすればちょっとした厄介者であろうことが感じ取れる。その苛烈さは、彼の血肉となっている陽明学が影響しているらしい。よほど強烈なものを内に秘めていたのであろう。 続きを読む

坂の上の雲/司馬遼太郎

主役は維新後の明治を駆け抜けた3人。

近代短歌・俳句を確立させた歌人正岡子規と秋山兄弟。日露戦争においてコサック騎兵団を破った兄の好古と、バルチック艦隊を破り日本艦隊を勝利に導いた弟の真之。また、二百三高地を巡る日露の攻防も必読あれ。 続きを読む

項羽と劉邦/司馬遼太郎

めっぽう戦に強く負け知らずの項羽と、戦えば必ず負ける劉邦。この二人が秦帝国末期に現われ、覇権を賭けた争いを繰り広げる。

負け続けてきた漢軍が最後に逆転できた理由はなんだったのか。劉邦は出身を問わず才あるものを積極的に採用した。一方項羽は武力を重視し、さらに能力を問わず地族、血族を軍で重用したがそれがいけなかった。無能の者が重役になってしまったからだ。 続きを読む

司馬遼太郎の随筆・対談集

アメリカ素描 司馬遼太郎 新潮文庫

単なる観光ではない、著者の目から見たアメリカの歴史、文化、文明が訪問先の風景を彩っていく。第二部、「ポーツマスにて」の章ではポーツマス条約調印に奮闘した小村寿太郎についてページが割かれているが、吉村昭の「ポーツマスの旗」を過去に読んでいたので親しみやすい内容に感じられた。

読了:2012年5月 続きを読む

夏草の賦/司馬遼太郎

土佐の一勢力を率いる長曾我部元親。土佐一国、四国、やがては中央を目指す過程での彼の盛衰が描かれている。

菜々という、岐阜城下でも美貌で評判の娘が元親から縁談を持ちかけられるところから物語が始まる。土佐に関する情報がほとんど無い状態で、菜々は周囲の心配をよそに快諾。当時の女性としては異様な冒険心だったようだ。 続きを読む