影武者徳川家康/隆慶一郎

1600年、濃霧のたちこむ関ヶ原で家康が暗殺された。

影武者が臨時に指揮を取り東軍を勝利に導いたが、合戦に勝利し天下掌握後もなお数十年間にわたり家康を演じ続けざるを得なくなってしまった影武者。権力とは無縁の生き方をしてきた影武者に、家康が築いた権力が重くのしかかる。 続きを読む

天と地と/海音寺潮五郎

積極的に版図を広げたわけでもなく、痛快な成りあがりを見せたわけでもない。それでありながらも周囲にその存在を恐れられた上杉謙信。彼の生い立ちからライバル武田信玄との決戦までが描かれた戦国小説だ。

越後の守護代・長尾家に生まれた虎千代(後の謙信)。父・為景には疎んじられ続け、また幼くして母を亡くした。不遇だが、虎千代には後に天才的な戦振りを見せるその片鱗があり、またそれを知った取巻きが彼を盛り立てた。さらに、長尾家女中の松江や、戦の指南役とも言える宇佐美定家などの存在も印象的だ。 続きを読む

ポーツマスの旗/吉村昭

外相小村寿太郎は日露戦争後の条約締結を担ってポーツマスに派遣された。ロシアを含む列強との熾烈な外交を描いた小説だ。

ルーズベルト大統領の仲介でかろうじて戦勝国となった日本だったが、条約締結に際しロシアに強気な態度を取れるような底力は日本には残っていなかった。 続きを読む

国盗り物語/司馬遼太郎

物語は大きく分けて、前半の斎藤道三編と後半の織田信長編の二つで構成されている。

まずは前編。戦国でも初期にあたる時代。妙覚寺の法漣房(のちの斎藤道三)が寺を出て乞食生活をしているところから始まる。一介の坊主あがりの乞食が国主を夢見る、といういかにも戦国ロマンを地でいくような話だ。 続きを読む

功名が辻/司馬遼太郎

特別な武功を立てるでもなく徳川時代まで生き抜いた山内一豊。彼にはしかし、戦国の世で命を拾い続けただけの武運があった。その一豊に武運を開かせたのが本書の主人公、一豊の妻・千代だ。

千代が嫁いだ当時、伊右衛門(一豊の通称)は風采の上がらぬ青年だった。そんな伊右衛門を、千代が土佐一国の大名にまで導いてしまうのだ。織田家ではまだまだ身分の低かった藤吉郎(後の秀吉)の才覚を早くから見抜いた千代は伊右衛門を藤吉郎に仕えさせ、秀吉の晩年には家康への鞍替えも示唆した。 続きを読む