捨て童子・松平忠輝/隆慶一郎

生れ落ちた直後に実父の家康から捨てられた忠輝。

しかしこの忠輝、並外れた身体能力と、ラテン語を自在に操る語学力を持ち合わせた稀有な武将へと成長する。領民からの信頼も厚く人気者の忠輝だが、それを不快に思う二代将軍秀忠は様々な方法を用いて忠輝に圧力をかけた。

隆慶一郎が描く秀忠は、なぜかいつも悪役である。「影武者徳川家康」ではその最たるものだ。彼は秀忠が嫌いなのだろうか。

この作品で重要な役割を果たすのは側近の大久保長安。鉱業者として名高く、南蛮渡来の技術を使いこなすが、技術のみを取り入れることは不可能だった。必然的にキリスト教がついてまわる。幕府によるキリスト教禁制が進むなか、長安は忠輝を将軍後継者に担ぎ出した。キリスト教に深い理解を示す忠輝は切支丹大名から支持を受けるが。

読了:1998年 2月