朝茶と一冊/出久根達郎

物書きが読書を語る。

読者にとってこれほど興味深いテーマを記したエッセイ集が他にあろうか。時折、著者の思い出話などが出てきて、話題についていけないところがあったが、余計なことを考えずに読めば十分にもとを取れる本である。

読中に笑えたり、読後に考えさせられたり、どこかホッとしたり・・・何やら陳腐な表現に思われるかもしれないが、本書はまさにそういう本だった。以下、もっとも印象に残った文章を本文より抜粋。

「本に何を求めようと、勝手である。人に指図されないところが、読書の良さだ。私は至極単純で、ぜいたくな暇つぶしと考えている。だから、面白い、面白くない、この二つだけで判断する。面白くないと暇つぶしにならないのである。では面白い本はどういう本か、というと、これは、ひとくちに言えない。」

よくぞ言ってくれた。全くその通りである。

読了:2000年 9月