草莽枯れ行く/北方謙三

官軍の先鋒・赤報隊を率いる相楽総三。

倒幕に人生を賭けるがいつしか偽官軍のうわさが流れ、やがて悲劇的な結末を迎える。官軍の汚い仕事を請け負った挙句に最後は使い捨てにされたのだ。しかし、本書は混迷する幕末の時代に、自分の信じる道をひたすらに生きた純粋な男の物語でもある。

他には清水の次郎長や新選組も登場する。この小説の1ページ目を本屋で立ち読みし、会話が醸し出す物語の雰囲気に引きつけられた。著者の文章を通して主人公の男気が感じられる。

特に印象に残った個所をひとつ。

やくざ渡世に生きる清水の次郎長と張り合う男に、黒駒の勝蔵がいた。勝蔵は自分の部下を堅気に戻すため池田勝馬と変名し、自らも堅気の官軍の兵隊となって次郎長と再会するくだりだ。勝蔵との決着にこだわる次郎長だが、やがて事情を呑み込んだ彼が勝蔵に一言くれる。その一連の言葉に痺れた。

読了:1999年 4月