黒田如水/童門冬ニ

信長、秀吉、家康。この3人の天下人に使えた名参謀・黒田官兵衛の人生を描いた小説。

頭が良すぎる。これが官兵衛こと如水の欠点だった。

主人の考えを常に先読みし行動するが、小回りが利きすぎて単独行動が多く、常に主人の機嫌を伺っているようなふしがありあまり良い印象はない。官兵衛は常に自分の業に悩まされていた。一言多いのである。はたしてそんな彼は人間として幸せだったのだろうか。本書を読んでいると、そんなことを思ってしまう。

官兵衛は天下人を狙っている。秀吉からのそんな疑いを避けるために、官兵衛は頭を丸めて法衣をまとい、自らを「如水」と称し、第一線から退くが、秀吉から見れば本心が見え見えで何とも白々しく思えたようだ。本書にはそれを思わせるような節が多々見うけられた。

しかし、多くの場合において彼の言動は的確であり、多大なる功績を残したのも事実のようだ。それがかえって主人に警戒される原因の一つでもあったが・・・

「地の利、人の利、時の利」

それが如水が挙げた天下人になるための条件だった。秀吉の死後、関ヶ原の合戦の隙に乗じて九州制覇を試みるが、合戦が僅か1日で終わってしまったため、ほとんど何も出来ずに次の天下人になるチャンスを逃してしまった。如水は、自分には「時の利」がなかったことを自覚し苦笑いを浮かべる。

他、したたかないくさ人・細川幽斎や、博多の貿易商人・島井宗室との交流が一つの見所でもあった。

読了:2000年 11月