野蛮人のテーブルマナー/佐藤優

元外務省、情報のプロが語るインテリジェンスの世界。

著者の言うインテリジェンスとは、試験対策で身に付けた知識を活用するための「ひとひねり」なのだそうだ。その技法を食事のテーブルマナーに例えてのこのタイトル。

欲しい情報を持っている人間へのアプローチひとつをとっても緻密に計画されている。食事の内容、話題、取り巻きへの配慮など、それらに対するコストが情報の価値で変わってくるというのが、当然といえば当然なのかもしれないが、読むと改めて納得してしまう。

記憶術や会話のスキルについても然り。
ふとしたことで相手の程度を知ることはあっても、それを知るために意図的に引っ掛け質問をするとなると、私には想像しがたい難易度になる。ただ漠然と、そういう世界があるものかと想像するだけでも情報の世界を垣間見ることが出来よう。

作り物の映画や小説よりも真に迫るものを感じるが、それが却って本書の意味を単なる娯楽ではないものにしているように感じられた。

他、数人との対談集が掲載されているが、相手をきちんと知ることの大切さ、組織での生き方・死に方(?)、組織を活性化させる体質、各国諜報機関のよもや話、国内・国際政治に至るまで。理解が及ばないまでも、何か勉強になった気分になれただけでも充分な一冊であろう。

読了: 2010年1月