千利休とその妻たち/三浦綾子

茶の湯。それは戦国時代を代表する文化のひとつであり、大名たちにとっても是が非でも身につけたい嗜みだった。その茶道の権威が本書の主人公、千利休だ。

境の豪商としても知られた宗易(後の利休)だったが、武家育ちの妻お稲の反応は冷たかった。茶の湯では城主になれぬというのが彼女の言い分だ。武将嫌いの宗易が城盗りを考えるはずもなかっただろうが、武将の妹であるお稲にはそんな宗易が理解出来なかった。しかし、宗易はやがて良き理解者と出会う。後の妻おりきだ。彼女は、お稲が相手では満たされなかった宗易の心に充足感を与えてくれた。 続きを読む

細川ガラシャ夫人/三浦綾子

明智光秀の娘として生まれ、細川家に嫁いだ後に切支丹の洗礼を受けたガラシャ夫人の生涯を描いた小説。ガラシャとは洗礼名である。

著者はまず、「親は多く子を語る・・・」とし、父光秀の人物像を掘り下げるところから物語が始まる。彼が妻を娶る際のエピソードなど、良い話がたくさんありそこからは光秀の清廉な人柄が伺えた。が、光秀をイイ男に描きすぎる嫌いがあるようにも感じた。光秀は放浪時代に苦労してきたためか、娘玉子への躾は愛情に満ちつつも決して甘やかすようなことは無かったようだ。 続きを読む