司馬遼太郎の随筆・対談集

アメリカ素描 司馬遼太郎 新潮文庫

単なる観光ではない、著者の目から見たアメリカの歴史、文化、文明が訪問先の風景を彩っていく。第二部、「ポーツマスにて」の章ではポーツマス条約調印に奮闘した小村寿太郎についてページが割かれているが、吉村昭の「ポーツマスの旗」を過去に読んでいたので親しみやすい内容に感じられた。

読了:2012年5月 続きを読む

小説十八史略/陳舜臣

紀元前、ほとんど資料が残っておらず、伝説として伝えられているような神話的時代から話が始まり、その後の夏、春秋、殷、周、秦、漢(前漢、後漢)魏、呉、蜀の三国時代、晋、隋、唐、モンゴルの台頭から宋の滅亡まで。小説仕立てにされた十八史略が延々と描かれている。

勝者によって若干色付けされた史実にマッタをかけ、真実を追究しようとする著者の姿勢が伺える。例えば、和睦によって一命を取りとめておきながら、その後に勢いが良くなると、後の記録に「相手が降伏した」みたいなことを書いたりする。一見どうでもいいようなことだが、そのへんに勝者の見栄が見え隠れしている。項羽と劉邦の覇権をかけた争いや、三国志、世界帝国を築いたチンギス・ハーンなどは馴染みの方も多いはず。それら英雄が駆け出しの頃の意外なエピソードが興味深い。三国時代の英雄と呼ばれた関羽も、著者にかかれば馬鹿者扱いである。以下、そのへんのくだりを本文より一部紹介。 続きを読む

チンギス・ハーンの一族/陳舜臣

草原の一部族にすぎなかったモンゴルが、やがて世界地図を塗り替えるほどの大帝国を築いた。その中心となったチンギス・ハーン一族の興隆を描いた小説。

一族の長となったテムジン(チンギス)は、やがてハーン(王)となり、隣接する部族を破竹の勢いで統合し、草原を支配する大ハーンとなる。中央アジアに一大勢力を築いたチンギスだったが、後継者が勢力を拡大しすぎたためか、次第に部族内での抗争が頻繁に起こるようになった。 続きを読む

秘本三国志/陳舜臣

黄巾の乱から漢王朝の崩壊、そして三国鼎立時代から晋の建国までを描いた小説。

一言で三国志といっても文献は様々だ。主に曹操を主人公にした「三国正史」。あるいは曹操を悪玉とし、どこまでも劉備を主人公に仕立て上げたがる講談仕立ての「三国志演義」などが代表的だろう。日本では、吉川英治の「三国志」などが有名どころか。 続きを読む

耶律楚材/陳舜臣

草原に一大勢力を築いたチンギス・ハーン一族に仕えた名参謀・耶律楚材の生涯を描いた小説。

楚材の父はまだ見ぬ草原の覇者の出現を予感していた。そして数多くの書籍を息子に書き残した。これから現われるであろう巨大な力に備えるために。楚材は父の死後もそれらの書籍を読み続けた。 続きを読む