道誉なり 北方謙三 中央公論社
室町時代の「ばさら」、佐々木道誉が主人公。その「ばさら」というのがどう言う者を指しているか良くわからないが、作品中の道誉の言葉を借りれば、己が生を毀すことのみを考えて生きる男をそう呼ぶらしい。しかし、そうかと言って単純に滅びの美学を追求していたわけでもなさそうだ。
作品中、主人公が最も多く交流するのが足利尊氏だ。尊氏は天下をほぼ掌握していたが、道誉はそんな尊氏を歯牙にもかけていなかった。道誉には、権力者など何程の者かと思う節があるようだ。尊氏が、いつか道誉に腹を切らせると言えば、道誉は尊氏をいつか自分にひれ伏させると言う。道誉には天下人の野望はなかったようだが、尊氏と向き合い憎まれ口を叩き合うあたりが興味深い。擦れた友情。二人の関係を表現すればそんなところだろうか。
また、その他の登場人物は、楠木正成、赤松円心、北畠顕家、高師直や実弟足利直義など、この時代では皆お馴染みだ。また、物語の終盤には懐良親王や菊地武光も登場する。後者の二人は「武王の門」の主役だ。
芸を嗜み、自らの道理にのみ忠実に生きるあたりが私がイメージするばさらと一致していた。さらに、松岡心平著「宴の身体」では、当時の「建武式目」で禁止されていたバサラ風潮を、「過剰で逸脱的な装飾性」と解釈されている。やはり派手だったのだろう。
また、吉川英治の「私本太平記」にも道誉が登場するが、その登場頻度を考えるとほぼ主役といっていい。軍記物としては若干物足りないが、そこには本書とはまた違った道誉のばさら振りが見られる。
読了: 2004年3月
| 評価項目 | 評価 |
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