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杖下に死す 北方謙三 文藝春秋


豪商や米商人に対して打ち毀しを行った事件として知られている大塩平八郎の乱。養子の格之助と主人公・光武利之の交流を軸に、決起に至るまでの世情が描かれている。

度重なる飢饉や米の売り惜しみ等で苦しむ市民を救わんと立ち上がった大塩平八郎。政治のあり方を世に問い掛ける意味で一石を投じたように思えたが、事件としての、あるいは平八郎自身のスケールはそれほどでもなかったようだ。しかし、本書で注目すべきは何よりも登場人物たちの男振りだ。

厳格な父の期待にこたえようと不器用にも一途に生きる平八郎の養子・格之助。剣客風情の主人公・光武利之はそんな格之助の生き方に魅力を感じ、そして格之助もまた利之の人柄に自分には無い強さを感じた。人間として「遊び」の部分を持たない格之助と、生き方にどこか真剣味が足りない利之。そんな二人が親友となる。そして二人がよく通った「めし屋」で交わされるちょっとした会話の節々がたまらく魅力的だった。ドライな会話の中にも相手に対する深い愛情を感じたからだ。

そしてラストの1ページを読んだ時、私は涙腺が緩むのを禁じ得なかった。

読了: 2003年11月 

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