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悪党の裔(上・下) 中公文庫


治安の悪化に伴い悪党が現れ始めた鎌倉末期。本書の主人公・赤松円心もその一人だ。物語は播磨を中心に畿内全体へと展開していく。

六波羅探題の荷駄を奪うシーンから物語が始まるあたりがいかにも悪党らしい。しかし、ただの野伏りや溢者とはどこか違っていた。円心の行動には代官への抵抗の意味もあったが、心の中では何か別のものも求めていたようだ。悪党として名を挙げたいという野望や功名心と言うよりも、自分が生きた証のようなものだ。天下を決するような戦はできないが、せめて自分の存在で重要な戦の行方を左右したい。そんなことを考えながら、円心は機が熟するのを待ち続けたようだ。そのために、暴れるべき時は暴れ、耐えるべき時は耐えた。

やがて円心は六波羅打倒に貢献し、そして世には倒幕の気運が高まった。円心はこれで満足したはずだったが、時の流れがまたも彼の心を動かした。倒幕の流れを汲んだ足利尊氏に加担したのだ。円心は、九州に落ちた尊氏を追討する新田の行軍を引き付けに引き付けた。

またこの時代、他に名を挙げた悪党として名高いのが楠木正成だ。円心は正成との交流を重ねる毎に正成を強く意識するようになった。強いライバル心と言い換えてもいい。しかし、行動や思考の際には常に正成を意識しつつも、決して同じであろうとはしなかった。あくまで、赤松円心という一人の悪党として生ききろうというのだろう。

読了: 2004年2月

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