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波王の秋 集英社文庫


南朝も北朝もない。海で生きる男たちが活躍する冒険小説だ。

物語の性格上、見せ場が海戦に依るところが多かったが、水軍の構成とそれぞれの目的はこうだ。済州島のナミノオオ水軍は元と高麗の二重支配から逃れ独立を目指し、上松浦党水軍は第3の元寇を未然に防ぎ海を守る。そして群一族。彼らは元寇の際、相手の前に最初に立ち塞がり捨て身で元軍の力を削いだが、その後は消息を絶ち一族でひっそりと暮らしていた。彼らにとってもまた、海がすべてだったのだ。それら3つの勢力が一つとなり、強大な元朝を倒さんと戦いを挑む。

先ず初めに、ナミノオオの密使が上松浦党水軍に接触し、波王水軍として旗揚げ後に群一族を味方につける。これが波王水軍結成の経緯であり、その後は迫力の海戦が続く。

ナミノオオと上松浦党が手を組んだ時点で元朝に挑む。それが読前、読中の予想だった。しかし、別の海域で身を潜めていた群一族の存在が明るみになり、波王水軍が接触を試みる。このあたりから、来るべき大海戦への緊張感がより一層募った。

隆慶一郎の「見知らぬ海へ」や司馬遼太郎の「菜の花の沖」など、海で生きる男たちが印象的に描かれた作品をいくつか読んだが、いずれの作品にも見受けられたある種の清々しさが、本書からも感じ取れた。

読了: 2004年9月

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