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水滸伝(1〜19) 集英社


宋末期の反政府勢力・梁山泊軍の興亡を描いた小説。

梁山泊軍の頭領は宋江。彼の思想を著した「替天行道」に共鳴した多くの人たちが宋を打倒すべく梁山泊へ集結する。

闇塩の道を取り仕切る慮俊義、同志を求め全国を行脚する魯智深、後に最強の騎馬隊を率いる林沖など。
水面下で着々と力を蓄えていく梁山泊軍はやがて軍師を加え、宋禁軍で不遇をかこちながら燻っていた有能な将校をも引き込んだ。

軍としての体制が徐々に強化されて行く梁山泊軍は軍規の弛み切った官軍との局地戦で小気味良い勝利を重ねて行く。勢い付いた彼らの動向は読者の心を躍らせるが、官軍はやがて本腰を入れて梁山泊討伐を始める。兵が精強になり、指揮官が洗練され、さらに兵力で圧倒してくる官軍は次第に梁山泊軍を追い詰めていく。

しかし全19巻からなる長編小説だ。見所は戦場のみに終わらない。

登場人物に、諜報活動や暗殺などを行う軍を率いる公孫勝という男がいる。戦場での勝利で活気付くわけでもなく、作戦に失敗すれば死しか残されていない過酷な軍。まともな神経ではとても務まりそうもない仕事を平然とこなして行く公孫勝。この男と、林沖との諍いが絶えない。公孫勝の陰気な物の言い方に過敏に反応する林沖、その林沖を何かと腕力に訴えようとする無能な男と切り捨てる公孫勝。肝心なところでは命を救い合うところを見ていると表面的な諍いのようだが、私などが読んでいると二人の掛け合いにハラハラしてしまう。
その公孫勝が、林沖のために一度だけ涙を流す。

さらにこの公孫勝と大いに絡んでくるのだが、官軍の秘密警察組織とも呼べよう「青蓮寺」との暗闘だ。袁明、李富などが主立った人物だが、彼らには本気で国を立て直そうとする芯が感じられる。彼らの思惑に干渉してみることで、単なる判官贔屓では終わらない物語の重厚さが味わえる。

そしてもう一人。元禁軍武術師範の王進だ。

ある事情から、禁軍を離れ山中で隠棲。
そこへ、様々な心の問題を抱えた人々が梁山泊から訪れる。元武術師範ということだけあり、彼の稽古を受けた者は下山後に一廉の武将に成長している。しかし、王進が本当に教えるのは人の人たるべき姿だ。強すぎた男に弱さを教えることで人への労わりを身に付けさせ、自分を見失った男にはどこまでも自分と向かい合う時間を与え自らを再生させる。
そうやって立ち直った男たちが下山後に活躍して行く様子が時折涙ぐましい。

同じ様に、王進に育てられたある男が下山後に梁山泊の志を継ぎ、続編「楊令伝」でも活躍する。ただしこの「楊令伝」はまだ作品が完結していないので今後さらに注目したい。

読了:2008年 5月

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