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新史 太閤記 新潮社


日本史上最も出世した人物、豊臣秀吉を描いた小説。

尾張の貧しい農家に生まれ、口減らしの為に寺に出された少年が、後に織田家に仕え、まさに寝る間も無いほど働きに働いた。次第に信長からの信頼を得るようになり、やがて織田家トップの実力者になった。このころの秀吉は誠心誠意で、彼の晩年に見え隠れする嫌味なところを感じない。

信長の死後は各地の実力者を従え、ついには天下人に成り上がった。しかし、本書ではその後の豊臣家の没落までは描かれておらず、秀吉の人生が一番華やかなところで物語が終わっている。

私は読中、秀吉という人間の成り立ちについて考えた。

織田家に仕えるまでの秀吉の半生は実に切ない。彼は幼い頃から散々にいじめられ、人に揉まれながら生きていた。しかし、それだけに人心の機微に敏感だった。後に「人たらしの天才」と呼ばれるが、それは少年時代に嫌でも身に付けなければならなかったヒューマンスキルが転じてのことであろう。頭が良いだけに感受性も人一倍強く、気が狂いそうなストレスを経験していたに違いないが、同時にそのストレスと上手に付き合う方法も身に付けていたのではないだろうか。劇的な生涯を演じきった秀吉だったが、私は彼の人生の華やかな履歴よりも、むしろ小説の節々で見られる彼の心の動きがなんとも興味深かった。

最後に、秀吉の辞世の句を以下に紹介。

「露と置き露と消えぬるわが身かな 浪華のことは夢のまた夢」

読了:2001年 9月

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