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親鸞(一〜三) 吉川英治 講談社


鎌倉時代初頭、浄土真宗を開いた親鸞の生涯を描いた小説。

源氏の血を引く藤家に生まれた十八公磨(まつまろ - 後の親鸞)。しかし、世は平家の時代。不遇の環境に育った十八公磨だったが、作品中の彼からは幼子らしさを見せる一方、気高く、神童の気配をも感じさせる。後に剃髪した十八公磨は法名を範宴とし、叡山に入った。それでまだ九歳だ。

周囲の学僧たちからの嫉妬を受けながらも、数々の難解な学問を修め続けた範宴だったが、下山して人間社会を見た彼は自分の学問の狭さに気付き、また世俗的な悩みも知った。苦悩する範宴だったが、法然との出会いが彼を救った。余程衝撃的な出会いだったのだろう。親鸞の弟子によって後に編纂された「歎異抄」には、法然の影響と思われる箇所が読み取れる。

しかし、親鸞が自らの経験から生み出した独自の解釈は従来の仏法とは異なり、法師たちからの非難の的となった。学問のための学問であるというのが従来の仏法ならば、親鸞の仏法は庶民の実生活に則したより人間的なものだったようだ。仏敵、邪説と虐げられながらも親鸞の思想は広く庶民に受け入れられたことは想像に難しくない。

本書では、煩悩に苦しみながらも独自の仏法を切り開いて行こうとする親鸞の姿が印象的だったが、同じく親鸞を描いた小説「弥陀の橋は」(津本陽著)では、庶民を相手に仏法を説いて回る真摯な姿が印象的だった。

栃木県二宮町の専修寺。墓地の最奥には石塀で囲まれた親鸞廟がある。

読了:2004年5月

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