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新史 黒田官兵衛 高橋和島 PHP研究所


小説の前半は、軍師としてよりもむしろ一人の人間としての官兵衛が描かれている。官兵衛はある老人との出会いをきっかけに、キリシタン的な精神世界に興味を示し始めた。その後、交渉に出向いた有岡城で捕われの身となり、獄中生活を送る官兵衛。孤独な獄中生活で味わう様々な葛藤。そこでデウスの教えに強い影響を受け、切支丹になった。また、小説の後半では、彼が秀吉を観察する目が冷静であり、時に冷ややかでさえある。この小説で描かれている官兵衛はしたたかである。そんな官兵衛が好きではあるが。

本編、「播磨攻め前夜」の章では、官兵衛は秀吉をこう評している。

「感嘆するのは、秀吉が見事に演じてみせる人間としての隙である。(中略)人間としての隙を計算ずくで見せて、相手に親近感を抱かせる---。どうやら、秀吉はこれのできる男らしい。」本文より。

が、そんな官兵衛を見透かしたように竹中半兵衛が言う。

「あまり買いかぶるのも考えものでござるぞ」本文より。

なんでもお見通しの半兵衛だった。

そして最後の章、「水攻め」における官兵衛と秀吉のやり取りに注目したい。

本能寺での信長死亡の報せを受けた秀吉が突然泣き出した。芝居掛かった秀吉の涙に呆れ果てた官兵衛が秀吉にこう言った。以下本文より。

「「羽柴様、泣くのはそれくらいにして、やらねばならぬ仕事を片付けることにいたしませぬか」(中略)顔を上げた秀吉は、赤い目をこちらに向けた。胸のうちを見透かされた者の狼狽の色がのぞいていた。」」

読了:1997年 7月

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