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ゾルゲ 引裂かれたスパイ(上・下) 
ロバート・ワイマント 新潮文庫


リヒアルト・ゾルゲ。ある時は辣腕ジャーナリスト、またある時はナチス党員。そしてその実態は。ゾルゲにはそんな紋切り型の表現が良く似合う。

第一次世界大戦が勃発するや、ゾルゲは高い理想を有しドイツ軍に入隊。が軍隊生活で彼が感じたものは戦争の無意味さだった。やがてゾルゲはコミンテルンのメンバーを経て赤軍第四本部で本格的な諜報活動を開始した。

彼の諜報網は様々な人物で構成されていたが、日本人として最も注目したいのがジャーナリストの尾崎秀実。尾崎は中国事情の専門家としてその博識の高さに定評があり、ゾルゲが欲した中国関連の情報を提供した。この二人の関係はゾルゲが在日中も続き、尾崎は多くの国家機密文書をゾルゲに提供した。当時の言葉で言えば「国賊行為」だ。しかし、尾崎が有した理想、あるいは思想は国境を超えていた。機密情報をゾルゲに提供することで、対ソ戦の回避を望んでいた節も見受けられた。

ゾルゲが入手した情報は第一級と言っても過言では無さそうだったが、本部とのすれ違いが彼を苦しめた。無線技師の背信行為も手伝い、ゾルゲが本部に送った(あるいは本人がそう信じ込んでいた)情報は、本人が思っていたほど重要視されていなかったのだ。

最後に、ゾルゲの人間像について若干述べたい。諜報員という職業柄、常に危険と孤独がつきまとう。過度の重圧に加え、交通事故の後遺症による神経障害がよりゾルゲの精神を不安定なものにした。酒に溺れ、女漁りを繰り返すが、ゾルゲの寂寥感を埋めるに至らなかった。また一方で、周囲の顰蹙を買うような強烈な一面を持ち合わせていたようだったが、果たしてそれはストレスや神経障害のみが原因だったとは言い難い。しかし、東京で拘留され取調べを受けた時は、関係者等を極力かばおうとする人間らしさを見ることが出来た。

読了: 2003年5月

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