耶律楚材(上・下) 陳舜臣 集英社文庫
草原に一大勢力を築いたチンギス・ハーン一族に仕えた名参謀・耶律楚材の生涯を描いた小説。
楚材の父はまだ見ぬ草原の覇者の出現を予感していた。そして数多くの書籍を息子に書き残した。これから現われるであろう巨大な力に備えるために。楚材は父の死後もそれらの書籍を読み続けた。
果たして、いくさ慣れした草原の部族の中から一人の天才が出現した。それがチンギス・ハーンだった。耳学問を好むチンギスは楚材を気に入り、軍の中で重用する。しかし、モンゴルには文化がなかった。略奪に次ぐ略奪。楚材は税制による統治の重要性を説くが、モンゴル軍にはその重要性がなかなか理解されなかった。欲しければ他から奪う。それがモンゴルのやり方だったからである。教養がある楚材にはそれが何とも絶えられなかった。殺戮を何とも思わないふしがあるモンゴル軍に文化をもたらし、平和な社会を作ること。それが楚材が密かに抱いた望みだった。争いを止めるには巨大な力が要る。モンゴルというこの上ない勢力をいかに利用し、争いのない社会を築くかが楚材のテーマだったようだ。
読了:2000年 11月
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