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ジパングの艦(上・下) 吉岡道夫 光人社
滅び行く幕藩体制の中にありながらも新国家設計に心血を注いだ幕臣小栗上野介忠順の生涯を描いた小説。
小栗は少年時代、学者が開いた私塾で横井小楠が唱える開国通商論に新鮮な刺激を受けた。そして小栗が小楠とのやりとりの中で特に興味を抱いたのは軍艦造りだった。外国から買うばかりではなく自国で造船し、さらに外国に修理を頼まず自国のドックで修理作業を行えば時間も資金も節約できるからである。物語の前半部は小栗の少年期から彼が渡米するまでが描かれており、登場人物たちの会話は小気味良い江戸前のべんらんめぇ調だった。歯切れの良い言葉の中にも人情がちらりとうかがえ時としてほろりとさせられた。
そして後半部。小栗はアメリカ使節団の監査役として日米通商条約批准のために渡米した。そこで為替レートの交渉などを行った。その他に小栗が吸収したものは後の国家設計の礎となるものだった。選挙制、蒸気機関車、ガス灯、造船所などである。帰国後、多くの奉行職を歴任しやがて念願だった造船所建設に着手した。手を組んだのはフランス人のヴェルニーという技師だった。しかし、小栗が完成された造船所を見ることはついに無かった。政局が変わり、薩長に眼の仇にされていた小栗は官軍に捕えられ処刑されてしまったからだ。小栗の指揮で軍備を整えていた幕府軍は薩長を筆頭とする新政府軍と戦っても十分に勝算があったのだが、主君である徳川慶喜が弱腰だっただけではなく、ついには大政奉還を行ったのだ。本書を読んでいると、小栗は殺されるにはあまりにも惜しい人物だったように思えた。
ちなみに造船所とその関連施設はその後の日本近代史上で重要な役割を果たし、そのいくつかは今尚現役だという。さらに現在では文化遺産としての評価も高いという。
読了: 2002年01月

小栗が隠遁した高崎市倉渕町の東善寺。寺内には使節団が渡米した際に米国で報じられたイラスト新聞など、幕末当時の資料が豊富に展示されておりまた、外には上野介遺品館もある。

同境内の上野介像。飄々とした気負いのない表情に思わず引き込まれそうになる。
横須賀市の臨海公園に立像する小栗(右)とヴェルニー(左)の銅像
| 評価項目 | 評価 |
| 一気に読めた | ★ |
| 感動した | ★ |
| 勉強になった | ★ |
| 知的興奮を覚えた | |
| 笑えた | ★ |
| 色々考えさせられた | |
| ストーリーが良かった | ★ |
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