燃えよ剣/司馬遼太郎

新撰組。当時はその名前を聞いただけで倒幕派の浪士たちは戦慄した。そんな屈強の剣客集団の興亡を描いた小説だ。

物語は土方歳三を中心に展開していく。武州多摩で生まれ育ち、ごろつきのような生活を送った歳三。近藤勇や沖田総司らとともに天然理心流を学んだが、それは、桂小五郎に代表される神道無念流や坂本竜馬に代表される北辰一刀流などに比べると、世間の認知度が低い田舎剣術だった。しかし、真剣での闘いは滅法強かった。食えない貧乏道場だったが、やがて京都守護職会津中将様御預浪士という法的・金銭的な後ろ盾を得るに至った。新撰組の誕生である。 続きを読む

酔って候/司馬遼太郎

表題作を含む四篇。いずれも幕末を舞台に描かれた短篇が収録されている。

山内容堂が主人公として登場する表題作も面白かったが、肥前の鍋島が登場する「肥前の妖怪」も面白かった。しかし、それら短篇集の中で最も興味深かったのは、「伊達の黒船」だった。提灯の張り替え屋を営む冴えない男・嘉蔵が、殿様の命令により西洋式の蒸気軍艦を作り始める、といった内容のもので、大抜擢された嘉蔵が西洋の技術を身につけようと努力しついに作り上げてゆくその姿に、技術者としての誇りと苦労が見られた。 続きを読む

世に棲む日日/司馬遼太郎

最も活発な討幕運動を繰り広げた長州藩。その原動力となった吉田松陰の思想を追い求めた人生と、その思想に最も影響を受けた弟子の高杉晋作。

まずは物語の前半。吉田松陰の生い立ちを読むと、彼の家庭教師の影響が後々の松陰の人格を形成したといっても良さそうだ。その教育思想は多分に狭であり、また狂でもあった。 続きを読む

竜馬がゆく/司馬遼太郎

坂本竜馬。幕末の混迷期に革新的な働きをした土佐藩出身の若者の人生を描いた小説。

いわゆるいじめられっ子のような少年時代を過ごすが、剣の道を志し、修業のために江戸へ行く。やがて免許皆伝され、そのまま剣豪としての人生を歩むかのように思われたが、時世が彼をそうさせなかった。自分が進むべき道を模索しつづける竜馬。様々な人物と出会い、見聞を広めることで次第に人生の目標を定めていった。武市半平太、岩崎弥太郎、桂小五郎、西郷隆盛、乾退助、中岡慎太郎、のちの伊藤博文や大久保利通など。私が好きなジョン・万次郎もチョイ役で登場する。 続きを読む