天狗争乱/吉村昭

過激な攘夷論者たちの間で最も過激といわれた水戸藩。その中に苛烈を極めた武装集団がいた。天狗党。

彼らは筑波山で挙兵し、例幣使道を通り日光東照宮を目指した。栃木町、宇都宮、鹿沼、今市などを通るが、彼らは行く先々で住民たちから恐れられ、また時には地元住民から圧力を受けるなどして、厄介者の印象が拭えない。 続きを読む

落日の宴/吉村昭

外圧が高まる幕末にロシア、アメリカなどの列強との外交に辣腕を振るった勘定奉行・川路聖謨の生涯を描いた小説。

川路とロシア使節プチャーチンは北方領土の国境問題をめぐり一進一退の交渉を続けた。詳細な事実を収集し、交渉時の裏付けをとるが、プチャーチンも様々な見地から弁論し一歩も譲らなかった。一座は緊迫し何度も交渉が中断された。何やらただならぬ雰囲気が読者に伝わってくるが、同時に日露両国間による心の交流も描かれており、時折微笑ましくさせる。 続きを読む

会津白虎隊/星亮一

鳥羽・伏見、戊辰戦争において薩長軍と矛を交えた会津藩。その会津藩の中でも最も若い年齢(16~17歳)で構成された戦闘部隊、白虎隊を描いた小説。

治安の乱れた京都を統治すべく派遣された会津藩。一時は薩摩藩と同盟し、京都を占拠する長州藩を追い出すが、薩長同盟成立後は一転して朝敵の立場に追いやられてしまった。幼帝を奪い、擁立させることで大儀名文を得ようとした薩長軍の謀略だった。 続きを読む

井伊大老/吉川英治

後継ぎ以外はすべて他家の養子になる、或いは臣籍に養ってもらうなどして、決して城内に住むことが許されない。これが井伊家のしきたりだった。そして、どちらも選ばぬものには適当な禄を与え、本人の自由にさせる。そしてそのどちらも選ばなかった男が井伊直弼だった。自ら「埋れ木之舎(うもれぎのや)」と称した家に住み、侘しい生活を送っていた。

ところが、井伊家の後継ぎが間もなくして没してしまった。残された後継ぎ候補者は直弼ただ一人だけだった。ここから彼の人生が変わった。大老になった直弼は、幕府の権威を保つために尊王、攘夷派の志士を弾圧し、独裁的な地位を築いた。 続きを読む

麒麟 橋本左内/岳真也

列強の脅威が迫る幕末において開国運動に奔走するが、後に政治犯として処刑され弱冠26歳の若さでその人生を終えた橋本左内の生涯を描いた小説。

医家に生まれた左内はやがて緒方洪庵が開く適塾に入り、そこで蘭語と医学を学んだ。彼は秀才揃いの塾内でもめきめきと頭角をあらわし、将来の名医として期待されるが、やがて政治運動に傾倒し始め、開国派として活動した。 続きを読む