戦乱の世に生まれ、武家育ちでありながらもやがて仏門に帰依した天海大僧正を描いた小説。
兵太郎(後の天海)の父は戦乱の世の在り方に疑問を抱いていた。血を流さずとも人と人が分かり合う方法があるはずだ、と。彼は仏の道に答えを見出そうとした。そんな父を幼い頃から見てきた兵太郎は、父と同じ思いを抱くようになった。武家に生まれ家督相続の義務を背負った兵太郎だったが、父の死後、悩みに悩んで出家を決意した。 続きを読む
戦乱の世に生まれ、武家育ちでありながらもやがて仏門に帰依した天海大僧正を描いた小説。
兵太郎(後の天海)の父は戦乱の世の在り方に疑問を抱いていた。血を流さずとも人と人が分かり合う方法があるはずだ、と。彼は仏の道に答えを見出そうとした。そんな父を幼い頃から見てきた兵太郎は、父と同じ思いを抱くようになった。武家に生まれ家督相続の義務を背負った兵太郎だったが、父の死後、悩みに悩んで出家を決意した。 続きを読む
著者は先ず、空海の思想を語る難しさを説いている。それを語るには著作を理解するだけでは不可能だからだ。そもそも、著作の内容を理解するだけでも普通の人々には無理であろう。それでもなお、難解なものに挑もうとする著者の姿勢、またそこから紡ぎ出されるであろう著者の空海観が冒頭から読者を引き付けるのだ。
空海の評価は明治以前、明治以後で2分される。呪術を行う密教が偉大な力の対象として崇められてきたが、近代化にともなう科学思想が従来の評価を覆した。時を経て、再び空海が見直されたがブーム化された風潮に著者は距離を置く。 続きを読む