騙し人/落合信彦

チェチェンの活動家がミサイル発射を企てた。ターゲットは日本。ところが、ロシア政府から対応依頼を受けた日本政府には打つ手が見つからない。そこで白羽の矢が立ったのは抜群に頭の切れる4人の詐欺師たちだった。政府の密命を受けた彼らがチェチェンに乗りこんだ。と、こんな感じで話がすすんでゆく。

今までの著者の作品から考えて、ニヒルな笑いを誘うようなジョークを期待していたのだが、本書にそれはなく、むしろ思わず吹き出してしまうような笑いが多かった。 続きを読む

名もなき勇者たちへ/落合信彦

主人公はイスラエルの情報機関(モサド)で活躍する女性エージェントだ。刺客として訓練を受けた彼女は世界中の大物をターゲットに駆け回る。本書で見られるモサドの訓練は、先頃読んだ「シルミド」を思い起こさせる。しかし、小説「シルミド」との違いは、訓練兵と教官との間に人としての情が見られたことだろう。

任務を重ねていく過程ではCIAやFBI、さらにはニューヨーク・タイムズの記者などが登場し、白熱の諜報活動が見られる。このあたりの緊張感は、著者のファンならばお馴染みだろう。さらに、聞き覚えのある中東の過激派グループやその指導者たちが登場することで、物語に現実感が沸き起こり、事の成り行きから目が離せなくなる。 続きを読む