そこにシワがあるから -エクストリーム・アイロニング奮闘記/松澤 等

いかに過酷、あり得ない状況の中で上質なアイロンがけを行うかを競うスポーツがある事を知ったのは数年前の某テレビ番組だった。山頂、水上や街中などどれ程非日常の条件下で競技をするかで選手(エクストリーム・アイロニスト)のユーモアが問われるのはもちろん、アスリートとして鍛え上げられた肉体も要求される。著者は日本におけるそれの第一人者だ。

これはユーモアであって決しておふざけではない。著者は主張する。
たしかに、中途半端な覚悟では重大な事故になりかねない状況でのアイロニングもこなすようだし、また本人がふざけていてはユーモア足りえず却ってしらけてしまうだろう。真摯に向き合うからこそ笑いと、時には感動を呼ぶのだ。 続きを読む

オリンピア/沢木耕太郎

1936年、ベルリンオリンピックに出場した日本選手団の活躍を描いた小説。

ライバル国との駆け引きあり、選手同士の友情あり、今だから言えるこぼれ話あり、とオリンピック出場にかける選手たちの、それぞれの意気込みが良く伝わってくる。そして、彼らはそれぞれの思惑を胸にベルリンへと旅立った。 続きを読む

スローカーブを、もう一球/山際淳司

ノンフィクション作家・山際淳司。スポーツ好きの方なら一度は聞いたことがある名だろう。本書には、表題作を含むスポーツ選手を題材とした作品8編が収録されている。

華々しくスポットライトを浴びる選手をいかにもスターとして扱うような書き方はしない。私が好いて止まない手法である。代表作、「江夏の21球」などは特にそうだ。読んでいて悔しく、やりきれない気分になる。 続きを読む