三国志/北方謙三

中国が魏、呉、蜀に三分され、それぞれが覇権を争った時代を三国時代と呼ぶようだが、黄巾の乱から三国鼎立までの群雄割拠の時期がより波乱に満ちている。それは本書でも例外ではない。

その時代の英雄の一人として呂布がいた。彼は無敵の騎馬隊を率いて各地を転戦し、天下を掻き回した。その武勇は中国全土に鳴り響いたが、一方でセンチな心をも併せ持っていたようだ。本書に描かれたそんな呂布の一面を垣間見たときには救われたが、余りに繊細過ぎて痛ましくも思えた。勇猛且つ繊細といった点では、張飛も良く似ていた。 続きを読む

秘本三国志/陳舜臣

黄巾の乱から漢王朝の崩壊、そして三国鼎立時代から晋の建国までを描いた小説。

一言で三国志といっても文献は様々だ。主に曹操を主人公にした「三国正史」。あるいは曹操を悪玉とし、どこまでも劉備を主人公に仕立て上げたがる講談仕立ての「三国志演義」などが代表的だろう。日本では、吉川英治の「三国志」などが有名どころか。 続きを読む