吉田松陰/山岡荘八

幕末の英雄の一人に数えられるであろう吉田松陰。本書は松陰の母・お滝が杉家(松陰の生家)に嫁ぐくだりから物語が始まる。

その杉家だが、お滝が嫁いだ当初は眼を覆いたくなるばかりの不幸続きで陰気に満ちていた。しかしお滝は、杉家に明るさを取り戻さんと奮闘するのだ。夫・百合之助(松陰の父)もまた、背負った不幸に背を向けずに毎日を勤勉に生き抜いていた。その二人の直向な姿が感動的であり、崇高ささえ覚える。松陰はそんな家庭に生まれた。 続きを読む

世に棲む日日/司馬遼太郎

最も活発な討幕運動を繰り広げた長州藩。その原動力となった吉田松陰の思想を追い求めた人生と、その思想に最も影響を受けた弟子の高杉晋作。

まずは物語の前半。吉田松陰の生い立ちを読むと、彼の家庭教師の影響が後々の松陰の人格を形成したといっても良さそうだ。その教育思想は多分に狭であり、また狂でもあった。 続きを読む