あかね空/山本一力

江戸の深川を舞台に生きる豆腐職人一家を描いた人情味溢れる小説。

主人公・永吉は京都の老舗豆腐屋で修業を積んだ後に、江戸は深川の長屋に移り住む。その後近所の人々からの手助けを受け、豆腐屋を開業。しかし、京風の柔らかい絹ごし豆腐は深川の庶民には受け入れられなかった。彼らの食習慣では固く歯ごたえの強い木綿豆腐こそが豆腐だったからだ。 続きを読む

漆黒の霧の中で 彫師伊之助捕物覚え/藤沢周平

「だが伊之助は凄腕の岡っ引と呼ばれた男である。胸の中に昔の勘が動いていた。」本文より。

江戸時代を舞台に繰り広げられる捕物小説だ。川岸に上がった水死体の素性調査を始めた主人公・伊之助。しかし、調査が進むに連れ第2、第3の事件が起り伊之助の身も危険に晒されて行った。探偵物にありがちなパターンだが、そこには江戸時代に生きる町人たちの細やかな人間模様も描かれており、典型的な時代小説の良例だ。 続きを読む