司馬遼太郎の随筆・対談集

アメリカ素描 司馬遼太郎 新潮文庫

単なる観光ではない、著者の目から見たアメリカの歴史、文化、文明が訪問先の風景を彩っていく。第二部、「ポーツマスにて」の章ではポーツマス条約調印に奮闘した小村寿太郎についてページが割かれているが、吉村昭の「ポーツマスの旗」を過去に読んでいたので親しみやすい内容に感じられた。

読了:2012年5月 続きを読む

松本清張の日本史探訪

三世紀のヤマタイ国から江戸時代後期の政治家まで。タイトルが示す通り、日本の歴史を彩った人物や出来事についての対談集。

最も読み易かったのが戦国期についての対談だ。細川幽斎、本能寺の変、豊臣秀吉などについて語られた個所はゆとりを持って読めた。彼らは以前に読んだ小説にも度々登場していたからだ。中でも、海音寺潮五郎との対談「豊臣秀吉」が興味深い。史上、最も人気が高いと言って良い豊臣秀吉についての対談相手に、味のある歴史作家を持ってきたあたりが歴史・時代小説ファンの心をくすぐる。 続きを読む

軍師の境遇/松本清張

秀吉に仕えた軍師・黒田官兵衛の生涯を描いた小説。天才軍師・竹中半兵衛と入れ替わるようにして秀吉の軍師になった。秀吉が信長に仕えていた時代、交渉に出向いた有岡城で捕われの身となり獄中生活を送った。戻りが遅いため信長に裏切り者と怪しまれ、危うく見殺しにされかかった。さらに、倅までもが生命の危機にさらされた。切れ者であるが故に疑われやすい。そんな軍師の不遇、と言ったところか。

読了: 1993年