司馬遼太郎の随筆・対談集

アメリカ素描 司馬遼太郎 新潮文庫

単なる観光ではない、著者の目から見たアメリカの歴史、文化、文明が訪問先の風景を彩っていく。第二部、「ポーツマスにて」の章ではポーツマス条約調印に奮闘した小村寿太郎についてページが割かれているが、吉村昭の「ポーツマスの旗」を過去に読んでいたので親しみやすい内容に感じられた。

読了:2012年5月 続きを読む

空海の思想について/梅原孟

著者は先ず、空海の思想を語る難しさを説いている。それを語るには著作を理解するだけでは不可能だからだ。そもそも、著作の内容を理解するだけでも普通の人々には無理であろう。それでもなお、難解なものに挑もうとする著者の姿勢、またそこから紡ぎ出されるであろう著者の空海観が冒頭から読者を引き付けるのだ。

空海の評価は明治以前、明治以後で2分される。呪術を行う密教が偉大な力の対象として崇められてきたが、近代化にともなう科学思想が従来の評価を覆した。時を経て、再び空海が見直されたがブーム化された風潮に著者は距離を置く。 続きを読む