豪商や米商人に対して打ち毀しを行った事件として知られている大塩平八郎の乱。養子の格之助と主人公・光武利之の交流を軸に、決起に至るまでの世情が描かれている。
度重なる飢饉や米の売り惜しみ等で苦しむ市民を救わんと立ち上がった大塩平八郎。政治のあり方を世に問い掛ける意味で一石を投じたように思えたが、事件としての、あるいは平八郎自身のスケールはそれほどでもなかったようだ。しかし、本書で注目すべきは何よりも登場人物たちの男振りだ。 続きを読む
豪商や米商人に対して打ち毀しを行った事件として知られている大塩平八郎の乱。養子の格之助と主人公・光武利之の交流を軸に、決起に至るまでの世情が描かれている。
度重なる飢饉や米の売り惜しみ等で苦しむ市民を救わんと立ち上がった大塩平八郎。政治のあり方を世に問い掛ける意味で一石を投じたように思えたが、事件としての、あるいは平八郎自身のスケールはそれほどでもなかったようだ。しかし、本書で注目すべきは何よりも登場人物たちの男振りだ。 続きを読む
「加害、被害、抑圧、被抑圧、その連鎖の中で傷つき、自民族こそが唯一の被害者であると深く信じて疑わない眼。」p.223。
民族浄化が行われた現地で、ある農民を取材した時の著者の言葉だ。
その眼の色が変わらない限り、民族の融和はありえないだろう。 続きを読む
戦後のGHQ占領下。進駐軍を向こうにまわし、日本国憲法誕生の瞬間に立ち会った白洲次郎の生涯を綴った人物伝。
がさつな少年時代を過ごした次郎は、中学時代にはすでにアメ車を乗り回していたという。家が裕福だったのだ。彼の父親、文平は米・ハーバード大学を卒業後、ヨーロッパにも留学し、貿易で成功した富豪だった。次郎は中学卒業後に渡英し、ケンブリッジ大学に入学。白洲家に寄宿していた外国人教師に英語を学んだため、渡英時には既に英語が堪能だったようだ。 続きを読む
韓国前大統領・金大中。一国の指導者たればその略歴はさぞ華々しいものだろうと想像するが、大統領当選までの道のりは実に波乱万丈だ。韓国民主化運動の中心人物だった著者だが、1980年の政変により約2年間の獄中生活を余儀なくされた。本書にはそんな逆境生活の中で家族に宛てた29通の手紙が収録されている。
まず、書簡全体を通して感じられたのは著者の篤い信仰心だ。逆境の受け止め方や家族への愛情などに対して顕著に見受けられる。いかなる信仰であれ、敬虔な信者の言動には排他的な側面が見られるものだが、著者の場合は他宗教の良い点を認め、また自ら信仰する教義の弊害をも同時に認めている。そんな著者の内面から搾り出すようにして書き出された証言は、下手な教典よりもずっと読者の心に響き、しばしば畏敬の念を抱かせる。 続きを読む
旧ソ崩壊に直面した元外交官。著者の諜報活動を通して当時の政変の様子が色濃く読み取れるノンフィクションだ。
著者の諜報活動の中で最も印象深かったのが人脈作りだ。それなりの人物に対して人脈を築けるだけの知的体力には嘆息するばかりだが、酒にも強い。人間の信頼度を測る目安の一つに酒を重要視する社会だったようだが、ウォトカと付き合えずに帰国する外交官もいたらしい。そんな中、著者は飲みに飲んだ。 続きを読む