追跡・アメリカの思想家たち/会田弘継

保守、リベラル、さらにはネオコン等、現代アメリカの思想潮流をなした11人の思想家たちについて述べられている。

思想家一人につき約15ページほど割かれているが、内容が濃いためにその1ページ、1行が重い。しっかり理解して行こうと思うならば、関連する副読本も相応に必要となってくるだろう。 続きを読む

司馬遼太郎の随筆・対談集

アメリカ素描 司馬遼太郎 新潮文庫

単なる観光ではない、著者の目から見たアメリカの歴史、文化、文明が訪問先の風景を彩っていく。第二部、「ポーツマスにて」の章ではポーツマス条約調印に奮闘した小村寿太郎についてページが割かれているが、吉村昭の「ポーツマスの旗」を過去に読んでいたので親しみやすい内容に感じられた。

読了:2012年5月 続きを読む

ツァラトゥストラはこう言った/ニーチェ

日常生活を営む以上、霞を食って生きているような隠者の思想を全面的に肯定することは出来ない。思想が掲げる理想が非現実的である場合が多いからだ。だが、我慢しながら読み続けると、時として読者がくぎ付けにされるような鋭い思想の断片を見ることが出来る。敬虔な無神論者から生み出された高潔な精神とでも言えば良いのだろうか。俗人に対して手厳しくもあるが総じて面白い読み物だった。

読了: 2003年6月 続きを読む

葉隠 —武士と「奉公」—/小池喜明

江戸時代(1700年代前半)、武士の心得を説いたひとつの思想体系が誕生した。山本常朝によって(あるいは彼の言語禄を他者が記録することによって)著された「葉隠」がそれである。本書はその研究書である。

山本常朝の生い立ち、「葉隠」の構成、当時の時代背景、そして思想的特徴などで構成されており、その研究範囲は細部に及んでいる。予備知識が乏しい私には時として理解が及ばないところもあった。そこで、特に印象に残った箇所だけを以下に述べたい。 続きを読む

氷川清話/勝海舟

幕末、維新の混乱期を生き抜いた勝海舟の語録が綴られている。その話題は自身の履歴、古今東西の人物論評、政治論、時評、文化など多岐に渡る。中でも興味深かったのは、幕末維新期の人物論だが、勝は著名人のみにならず、市井の人々たちとの交流についても言及している。明治政府について否定的な意見が多かったのも印象的だ。

本書は勝が晩年に語ったものを編集したものらしいが、中には勝の記憶違いや彼一流の法螺などがあり、史実とのずれが若干見受けられる。また、「氷川清話」が最初に世に広められたのは吉本襄の編集によるものだったようだが、編集の過程において海舟の真意が歪曲され、また改竄著しいとの理由で、江藤淳らに徹底的に洗い直され、再編集されたのが本書だ。 続きを読む