熱田の宮大工だった主人公の岡部又右衛門。その仕事ぶりが長年にわたって信長に評価され、後に安土築城を命じられる。言葉数の少ない信長の意向を漏らさず汲み取り、イメージ通りに仕上げていく又右衛門の職人振りはお見事だ。
しかし信長の又右衛門に対する要求は常に斬新で、且つ厳しい。生唾を飲み込むような緊張感の中で、あらゆる可能性を見出そうとしていく又右衛門の様子からは番匠としての誇りや好奇心が感じられ、今後織田家と共に気運を高めていくであろう将来が想像できる。 続きを読む
熱田の宮大工だった主人公の岡部又右衛門。その仕事ぶりが長年にわたって信長に評価され、後に安土築城を命じられる。言葉数の少ない信長の意向を漏らさず汲み取り、イメージ通りに仕上げていく又右衛門の職人振りはお見事だ。
しかし信長の又右衛門に対する要求は常に斬新で、且つ厳しい。生唾を飲み込むような緊張感の中で、あらゆる可能性を見出そうとしていく又右衛門の様子からは番匠としての誇りや好奇心が感じられ、今後織田家と共に気運を高めていくであろう将来が想像できる。 続きを読む
明治時代に航空機の研究をした二宮忠八が主人公。幼い頃から凧作りと絵の才能に長けた忠八は学業にも秀で、塾では飛び級扱い。 商家に生まれるが、長兄と次兄による放蕩で事業が失敗。家は破産し、忠八は中学に進学せずに呉服店に奉公に出る。
奉公先で子守ばかりの生活に膿んだ忠八は再び凧作りに熱を上げるようになった。写真館の助手や薬種商、測量などの仕事を渡り歩き、ある日の新聞記事で軽気球の存在を知り興奮する。忠八は気球を模した凧をあげ、舞った凧からチラシを蒔くカラクリを研究するが、このあたりは読んでいて実に楽しげだ。 続きを読む
実用書やビジネス書からではなく、古典や小説、芸能人本などから実利性を読み取るための読書術。いくつかの章に分かれており、古今東西の作品がそれぞれの章に収まっている。
娯楽のための読書とは違った読み方を説いているとは言え、引き合いに出す作品が冒頭から「資本論」だ。一般読者にはハードルが高いが、断片的に理解できそうな箇所を拾える事が救いだ。「資本主義の本質がよくわかる」という理由で挙げている伊藤潤二氏著の「うずまき」は、触りとして読んでみようかという気になった。 続きを読む
16編に及ぶ著者の読書論と1編の対談から成る。
著者自身の学生時代の読書法から始まり、若い頃の濫読が後年の読書生活を支えるであろうことが語られる。また、ある作家の全集を読むことも読者に勧めている。作家のより深いところを手探りする精神作業によって、書物の向こうに人を見ることの重要性を説いているのだ。 続きを読む
鳥羽・伏見の戦いに敗れ、さらには薩長の策略で朝敵となってしまった将軍・徳川慶喜。薩長を参謀とする朝廷軍は江戸への進撃の構えを見せるが、慶喜は江戸を戦火から守るべく朝廷軍に対して恭順策を取る。しかし、江戸を武力で制圧したい朝廷軍は慶喜の恭順を受け入れようとしない。
慶喜の恭順策を成就させるべく朝廷軍との交渉に挑むのは東叡山寛永寺山主・輪王寺宮だ。そしてその宮を警護するのが幕府への忠誠心が厚い彰義隊。物語の序盤は彰義隊結成の経緯から敗戦までが主に描かれているが、中盤以降は輪王寺宮の動向が主に描かれている。 続きを読む