樅ノ木は残った/山本周五郎

舞台は江戸時代前期の仙台藩。伊達騒動という、一連のお家騒動に関わった宿老の原田甲斐が主人公だ。この騒動の背景には幕府の老中・酒井雅楽頭と仙台藩主一族の伊達兵部との間に交わされた仙台藩六十二万石分与の密約があった、というのが本書の設定。

伊達家に混乱をもたらすための陰謀の手始めとして、藩主・伊達綱宗の強制隠居があった。淫蕩が理由とのことだったが、その廉で綱宗の側近四名が「上意討ち」にあう。この事件で惨殺された彼ら四名の家族のうち、新八や宇乃といった人物が後にこの物語を彩っていく事になる。(決して復讐劇になるわけではないが。) 続きを読む

甲賀忍法帖/山田風太郎

徳川家の三代将軍は竹千代か、それとも国千代か。長年の敵対関係にある伊賀と甲賀が徳川家の後継者を賭けた代理戦争に臨み、10人対10人の忍法勝負が繰り広げられる。

タイトルが忍法帖というぐらいだから、選ばれた20人が繰り出す忍法は極めて意外性に富んでおり、多分に娯楽的だ。が、これは儚い恋物語でもあるのだ。 続きを読む

かくれさと苦界行/隆慶一郎

前作、「吉原御免状」の続編。

主人公・松永誠一郎は、徳川幕府によって政権を剥奪された後水尾天皇の隠し子だった、という設定だ。生後、剣豪宮本武蔵に育てられ、その後巡り巡って色里吉原の惣名主になった。御免状奪取を試みる幕府の権力者と、御免状を守る吉原者との争いが物語の中心である。 続きを読む

影武者徳川家康/隆慶一郎

1600年、濃霧のたちこむ関ヶ原で家康が暗殺された。

影武者が臨時に指揮を取り東軍を勝利に導いたが、合戦に勝利し天下掌握後もなお数十年間にわたり家康を演じ続けざるを得なくなってしまった影武者。権力とは無縁の生き方をしてきた影武者に、家康が築いた権力が重くのしかかる。 続きを読む

死ぬことと見つけたり/隆慶一郎

武士道とは死ぬことと見つけたり。

鍋島藩浪士、斎藤杢之助は「葉隠」を武士の哲学とし、死人としての生を送る。また彼は鉄砲の名手であり、そのいくさ人としての心意気が作品の至るところで見受けられた。同じく鉄砲の名人、下針金作や、「心の一方」の使い手である松山主水との決闘はなかなかにきまっていた。 続きを読む