山椒魚戦争/カレル・チャペック

人間との出会いによって高度な文明を手に入れた山椒魚。その山椒魚がやがては人間の存在を脅かすというSF小説だ。

デヴィル・ベイ(魔の入江)に生息する黒い生物。上体を左右にくねらせながら不思議な歩き方をするその生物にJ・ヴァン・トフ船長が次第に距離を縮めていく。タパ・ボーイズと呼ばれた彼らにナイフを授けると、やがて貝をこじ開け真珠を採ってきたり、天敵のサメを退治したりと、学習能力が高い事を伺わせる。 続きを読む

神の火/高村薫

元原発技術者でもあり、ソ連のスパイでもある。それが本書の主人公・島田浩二だ。そんな人物設定だから、《北》もアメリカもソ連も絡み、ある資料を巡って国際的な暗闘が繰り広げられる。

西側の原発技術を東側に流し続けていた島田は、原研を辞めて平凡な人生を送っていたが、彼を諜報員として育て上げた江口彰彦と再会するあたりから物語が動き出す。高塚良という、明らかにソ連が作り上げたと思われるロシア人風の日本人青年が登場したり、何をしでかすのか分からない幼馴染の日野草介が登場するが、著者が描く主要人物に共通して見られる何かが通底していて、「あぁ、高村薫が描く登場人物だなぁ。。。」と安堵する。 続きを読む

李白と杜甫/高島俊男

共に中国・唐代の詩人。この二人の生涯とそれぞれの作品に触れる事が出来る一冊。

それぞれの作風(?)については何となく感じ取るものはあれど、私には詩を読んで何かを感じる感性が乏しいのか、著者の解説があってさえ何かを深く感じ入る事は無かった。それは、読んでいる時の自分の状況とかもあるだろうから、時間を置いていずれ読み返すのもいいかも知れない。 続きを読む

官僚たちの夏/城山三郎

終戦から復興の兆しが見え始めた昭和が舞台。主人公は通産省で人事に心血を注ぐ風越信吾だ。

まるでトランプ占いをするかのように人事カードを使って理想の配置を考える風越だが、対象となる人物たちの表情を思い浮かべながら脳内で対話している様子に血の通った仕事ぶりを感じる。今後の日本の発展を担うであろうエリート達。扱う人間が優秀ならば力も入るだろう。 続きを読む