追跡・アメリカの思想家たち/会田弘継

保守、リベラル、さらにはネオコン等、現代アメリカの思想潮流をなした11人の思想家たちについて述べられている。

思想家一人につき約15ページほど割かれているが、内容が濃いためにその1ページ、1行が重い。しっかり理解して行こうと思うならば、関連する副読本も相応に必要となってくるだろう。

私はその道のスペシャリストでもなければ、それらの知識を身に付けるための時間も割けないごくありふれた市井の一読者だが、本書で紹介されているH.L.メンケンに興味があったので、せめて触れるだけでもという思いから読んでみた。

そのメンケンは、「第7章 ジャーナリズムの思想と機能」で紹介されている。

著者はまず、ウォーターゲート事件やイラク戦争などを例に、アメリカのジャーナリズムが政治利用の道具に成り下がっている事を提起し、ジャーナリズムの活力について再考している。

そんな書き出しからの“媚びないメンケン”登場だ。

高卒から地元紙で腕を磨いたという叩き上げの記者は徹底して権力を嫌った。嫌ったというよりも、世論に流されて鵜呑みにせず、疑いの目を持って自分の目で確かめるという批評精神が、結果的に権威を叩くという言動になっていたのだ。大統領が掲げる理念も、メンケンにとってはお為ごかしにしか思えなかったに違いない。仮に誰もがそう感じていても、公言するのとしないのでは大差があるので、そこは常人の及ばないところ。

それらの疑問を呑み込み、上手に政治利用されていれば甘い汁も吸えたかもしれないが、それをしないところに彼の凛とした精神の輝きを感じる。

親しみのある思想家一人を取り上げたが、他の思想家たちひとりでも興味があれば、ぜひ本書を読まれたい。

読了:2009年11月