インド哲学へのいざない/前田専學

インドで成立・発展した哲学・宗教思想の中から「ヴェーダ」、「ウパニシャッド」について述べられた一冊。

簡単に説明すると、紀元前1200年頃を中心に編纂された文献が「リグ・ヴェーダ」と呼ばれるもので、その他に「○○・ヴェーダ」と呼ばれるものが3種類存在する。それらを総称したものが「ヴェーダ」であり、その後の時代の変化に順応するように作成されたのが「ウパニシャッド」だ。

内容のほとんどが抽象的であり、それを把握するにはある程度の予備知識と集中力が必要だ。もともと思想・哲学とはそう言うものだと思うが、物事を深く考えたいときにはかえってその方が都合がよい。具体性を意識すると思想の幅が制限されるからだ。が、逆に思想を表現するにはある程度具体的であることも必要だ。そこで、具体的でわかりやすかったくだりをひとつ紹介したい。

「ウパニシャッド」で説かれる究極の目的は「解脱」にあるらしいのだが、インド独立の父と呼ばれたマハートマ・ガーンディーはそれを社会奉仕と読み替えて追求・実践していたようだった。「解脱」が何なのかは不明だが、彼はそれを実現不可能な理想と考えていたという。実現不可能であると気が付くあたりがやはり月並みではないのだ。

読了: 2002年7月