私が初めて、一般的に言う「難しそうな本」を自ら購入し、そして食い入るように最後まで読みきった本だった。
高1くらいの時だったと思う。私が好きな作家、隆慶一郎が著者に師事していたというのを知ったのはずっと後になってからの事だった。(著者には随分叩かれたようだったが)
はるか10年以上前に読んだ本だったが、思うところがあり再び書棚から取り出して読んでみた。物事に対する深い洞察力から生み出された著者独特の解釈は、時として高度なユーモアを感じさせ、また痛烈なブラックユーモアをも感じさせる。1章読み終わる毎に、私は深いため息と共に満足感に浸るのだった。
今回もやはり、読み始めたら止まらなかった。そして前回よりも面白く感じた。随筆のように思えるが、その内容は多分に哲学的だ。本書は恐らく、年齢を重ねれば重ねるほど、多くを学べば学ぶほど、そして考えれば考えるほど、その面白さを増すに違いない。
著者こそが、哲人と呼ぶに相応しい人物なのではないだろうか。
読了: 1991年