明智光秀/早乙女貢

当時としては珍しい文武両道の人物であったようだ。信長自身が軍師を必要としていなかったようだが、光秀は確かに知的戦略を得意としていたようだ。

明智光秀=南光坊天海説を地でいく小説。小説のテーマとしては夢があって最高に面白く、実際にこの小説は面白い。しかし、本能寺の変の後に天海として身を変え、家康に仕えるまでの接点にいささか無理を感ぜずにはいられない。 続きを読む

明智光秀/嶋津義忠

下克上、成りあがり。それぞれの意味は若干違うが戦国時代を象徴する言葉だ。農民から天下人となった秀吉に代表されるその表現だが、光秀はどうか。人生の出発点や彼の取巻き等を見ると秀吉よりも恵まれていたようだったが、実力主義の信長の下で頭角を現したと言うだけでも当時の特筆すべき人物だったことは容易に想像できよう。

射撃術に秀で、一軍を率いての戦も上手かった光秀だが、やはり知将としての印象が強い。本書では、光秀が土地々々を治める政治的手腕の見事さが印象的だったが、彼自身、戦よりも治世に身を費やすことを望んでいた節が見受けられる。そういう男が、戦場で指揮を取らなければならなかったところにその時代の不幸があったと言えよう。 続きを読む

マラドーナ自伝/ディエゴ・アルマンド・マラドーナ

ディエゴ・アルマンド・マラドーナ。サッカー通でなくても誰しも名前くらいは知っているだろう。アルゼンチンが生んだ天才サッカープレーヤーが自らの半生を語った一冊。

私が本書に求めたものはディエゴ(親しみを込めて彼をこう呼ぶ)の眩しいようなサクセスストーリーよりも、むしろ1986年のメキシコ・ワールドカップ、対イングランド戦でみせた「神の手」によるゴールや、1994年のアメリカ・ワールドカップでの薬物疑惑などと言ったスキャンダラスな事件についての詳細と、それがどうコメントされているのか、ということだった。 続きを読む

天翔ける倭寇/津本陽

戦国時代、富を求めて海へ出た海賊・倭寇を描いた作品。

海上でのみならず大明へ渡ってからも連戦連勝の彼らだが、次第に郷愁の念が漂いはじめた。しかし、誰もそれを口に出せなかった。それがかえって郷愁の念を増すことになるのだ。そう思いながら私はこの作品を読んでいた。 続きを読む