スローカーブを、もう一球/山際淳司

ノンフィクション作家・山際淳司。スポーツ好きの方なら一度は聞いたことがある名だろう。本書には、表題作を含むスポーツ選手を題材とした作品8編が収録されている。

華々しくスポットライトを浴びる選手をいかにもスターとして扱うような書き方はしない。私が好いて止まない手法である。代表作、「江夏の21球」などは特にそうだ。読んでいて悔しく、やりきれない気分になる。 続きを読む

前略、人間様。—長渕剛詩画集—/長渕剛

「乾杯」、「とんぼ」など数々のヒット曲を生み、また役者としても活躍するシンガーソングライターの本だ。自分で詩を書きそれを歌う人だから、それなりに良い詩を書くのだろう、と期待を込めて購入した。内容は大変良かった。ファンならば、心に染みる詩の一つや二つは必ず見つかるだろう。

私が始めて著者の唄を聞いたのは小学生のころだった。確か自分が主演のドラマで主題歌を歌っていたと思う。「SUPER STAR」と言う歌だった。しかし、当時興味があったのは歌よりもむしろドラマの内容だった。 続きを読む

ゾルゲ 引裂かれたスパイ/ロバート・ワイマント

リヒアルト・ゾルゲ。ある時は辣腕ジャーナリスト、またある時はナチス党員。そしてその実態は。ゾルゲにはそんな紋切り型の表現が良く似合う。

第一次世界大戦が勃発するや、ゾルゲは高い理想を有しドイツ軍に入隊。が軍隊生活で彼が感じたものは戦争の無意味さだった。やがてゾルゲはコミンテルンのメンバーを経て赤軍第四本部で本格的な諜報活動を開始した。 続きを読む