神の火/高村薫

元原発技術者でもあり、ソ連のスパイでもある。それが本書の主人公・島田浩二だ。そんな人物設定だから、《北》もアメリカもソ連も絡み、ある資料を巡って国際的な暗闘が繰り広げられる。

西側の原発技術を東側に流し続けていた島田は、原研を辞めて平凡な人生を送っていたが、彼を諜報員として育て上げた江口彰彦と再会するあたりから物語が動き出す。高塚良という、明らかにソ連が作り上げたと思われるロシア人風の日本人青年が登場したり、何をしでかすのか分からない幼馴染の日野草介が登場するが、著者が描く主要人物に共通して見られる何かが通底していて、「あぁ、高村薫が描く登場人物だなぁ。。。」と安堵する。 続きを読む