チェルノブイリ診療記/菅谷昭

チェルノブイリ原発事故から10年後のベラルーシ。日本の甲状腺外科医が綴った現地での医療活動記録だ。

原発事故の影響で甲状腺に異常が出やすい少年少女が主な診療対象だが、その医療環境が劣悪だ。切れ味の鈍いメス、虫が飛び入ってくるような手術室、「手術の質よりこなした数」という考え方、術式の古さなど、経済の悪化でにわかには改善しがたい現実が著者を悩ませる。 続きを読む

ユーゴスラヴィア現代史/柴 宜弘

「「第二次大戦後のユーゴは、「七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家」という表現に端的に示される、複合的な国家であった。」」(本文より)

タイトルに「現代史」とあるが、実際には数世紀前からの近隣諸国を含むバルカン半島の歴史が述べられている。ユーゴ建国までの流れや建国後の問題、そして内戦勃発への複雑ないきさつから連邦解体まで。前述した端的な表現からある程度想像できるように、紛争の種があちこちに存在していた。 続きを読む

終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ/木村元彦

「加害、被害、抑圧、被抑圧、その連鎖の中で傷つき、自民族こそが唯一の被害者であると深く信じて疑わない眼。」p.223。
民族浄化が行われた現地で、ある農民を取材した時の著者の言葉だ。

その眼の色が変わらない限り、民族の融和はありえないだろう。 続きを読む

自壊する帝国/佐藤優

旧ソ崩壊に直面した元外交官。著者の諜報活動を通して当時の政変の様子が色濃く読み取れるノンフィクションだ。

著者の諜報活動の中で最も印象深かったのが人脈作りだ。それなりの人物に対して人脈を築けるだけの知的体力には嘆息するばかりだが、酒にも強い。人間の信頼度を測る目安の一つに酒を重要視する社会だったようだが、ウォトカと付き合えずに帰国する外交官もいたらしい。そんな中、著者は飲みに飲んだ。 続きを読む

プラハの春/春江一也

華のプラハがワルシャワ条約軍の軍事介入により、一転して悲鳴の飛び交う街へと変貌した。

1968年8月にチェコスロバキアで起こった政治改革運動を描いた小説。当時、著者は在チェコの担当官だった。在勤当時の体験がストーリーのもとになっているのだろう。 続きを読む