波王の秋/北方謙三

南朝も北朝もない。海で生きる男たちが活躍する冒険小説だ。

物語の性格上、見せ場が海戦に依るところが多かったが、水軍の構成とそれぞれの目的はこうだ。済州島のナミノオオ水軍は元と高麗の二重支配から逃れ独立を目指し、上松浦党水軍は第3の元寇を未然に防ぎ海を守る。そして群一族。彼らは元寇の際、相手の前に最初に立ち塞がり捨て身で元軍の力を削いだが、その後は消息を絶ち一族でひっそりと暮らしていた。彼らにとってもまた、海がすべてだったのだ。それら3つの勢力が一つとなり、強大な元朝を倒さんと戦いを挑む。 続きを読む

アメリカよ!あめりかよ!/落合信彦

著者の半生を描いた自伝的小説。高卒後,アメリカ・オルブライト大学に留学。1960年代の古き良きアメリカが,彼の留学体験をより劇的なものにしたようだ。卒業後オイルビジネスを始め、世界中を飛びまわる。彼の作品のいくつかは,この作品を原点にしているように思える。

学生時代の友人に薦められて読んだことがきっかけで、著者の本を好んで読むようになった。 続きを読む

武王の門/北方謙三

足利幕府の勢力が全国を席巻しつつあり、その力は九州にまで及ぼうとしていた。九州探題を置いた幕府だが、反対勢力たちの存在もままならなかった。牧宮(懐良)が率いる征西軍(南朝)もその反対勢力の一つだ。

九州を統一し、足利幕府とはまったく違う新しい国を造ること。それが懐良の夢だった。九州入りするまでの展開は比較的緩やかだが、後に無双の強さを誇る武将へと成長する菊地武光の登場により物語が加速する。 続きを読む

水の城 いまだ落城せず/風野真知雄

秀吉による北条討伐も大詰め、北条方の支城が次々と落城する中で唯一不落を通した忍城。大軍で押し寄せる石田三成軍と寡兵で立ち向かう成田長親が繰り広げる攻防戦が描かれた作品。

蓮沼と巨木に囲まれた天然の要塞。地の利に恵まれていたようだが、持ち堪えられた要因はそれだけではない。城代・長親の鷹揚とした性格が周囲に与えた影響も大きかったようだ。籠城が決定した際、小田原に参戦する城主・成田氏長の城代となった長親だが、誰かに恨まれることはないが決して頼られるわけでもない凡庸な男の登場に読者ですら不安を覚える。 続きを読む