千利休とその妻たち/三浦綾子

茶の湯。それは戦国時代を代表する文化のひとつであり、大名たちにとっても是が非でも身につけたい嗜みだった。その茶道の権威が本書の主人公、千利休だ。

境の豪商としても知られた宗易(後の利休)だったが、武家育ちの妻お稲の反応は冷たかった。茶の湯では城主になれぬというのが彼女の言い分だ。武将嫌いの宗易が城盗りを考えるはずもなかっただろうが、武将の妹であるお稲にはそんな宗易が理解出来なかった。しかし、宗易はやがて良き理解者と出会う。後の妻おりきだ。彼女は、お稲が相手では満たされなかった宗易の心に充足感を与えてくれた。 続きを読む

竹中半兵衛/高橋和島

僅か16名で稲葉山城を奪った男。半兵衛を語るうえでの代名詞のような武勇伝だが、実際のからくりはこうだ。

半兵衛の弟は稲葉山城に人質に出されてたが、仮病を装う様に言い渡されていた。見舞と偽って半兵衛たちが入城する口実だ。果たして、いざ半兵衛が入城するや、戦闘を始めた。その際、敵の混乱に乗じて、予め城外に待機させていた数千もの軍勢に大声をあげさせた。大軍が攻めこんで来たと敵に錯覚を起こさせ、一層の混乱を招かせたのだった。城外にいた数千の軍勢によって起された大声が、半兵衛の作戦を後押ししたことには違いないが、「僅か16名で難攻不落の城を落とした竹中半兵衛。」と、その名が広められた。 続きを読む

天海/堀和久

戦乱の世に生まれ、武家育ちでありながらもやがて仏門に帰依した天海大僧正を描いた小説。

兵太郎(後の天海)の父は戦乱の世の在り方に疑問を抱いていた。血を流さずとも人と人が分かり合う方法があるはずだ、と。彼は仏の道に答えを見出そうとした。そんな父を幼い頃から見てきた兵太郎は、父と同じ思いを抱くようになった。武家に生まれ家督相続の義務を背負った兵太郎だったが、父の死後、悩みに悩んで出家を決意した。 続きを読む

天下城/佐々木譲

戦国時代の築城の中でも特に石積みの技術に秀でた職人集団がいた。多くの石垣を築いてきた近江の穴太衆の一人が本書の主人公・戸波市太郎だ。

滋賀城陥落を目の当りにした少年時代の市太郎。以来、難攻不落の城を築かんと自らの夢を定めた。兵法者・三浦雪幹に師事し、漢籍を学びながら諸国の城を見て回る。城を見る目が肥え、多少の学問も身についた市太郎だが、まだまだ兵法者と呼ぶには程遠い。 続きを読む