柳沢騒動/海音寺潮五郎

五代将軍・綱吉の後継者問題に一騒動を巻き起こした元凶の人と言われる柳沢吉保。しかし、それは俗説のようで、真相は違うところにあったようだ。

物語の前半は綱吉が幅を利かせている。後世においても悪評高い生類憐憫令や愛犬令などが発令されるに至った経緯などが描かれ興味深いが、そこには綱吉の取り巻きによる権謀術数や彼の人的欠陥が起因しているようだ。綱吉の言動には上様としての資質のみならず、人道的なモラルの有無すらも問わざるを得ない多くの疑問点が見受けられる。綱吉の下で奉公する実直な忠臣が登場するのだが、彼らが実に不幸なのだ。読んでいて辛い。その忠臣が被った事件こそが、著者の言わんとしている真相に大きく絡んでいるのだが。 続きを読む

吉宗と宗春/海音寺潮五郎

疲弊した幕府の財政を立て直すべく吉宗が施行した倹約令。この政策で幕府は生き返ったが、人民の生活は潤いを失った。府庫に貯め込むばかりで、通貨が流通しなかったからだ。その吉宗の政策に真っ向から対立したのが、御三家尾張の宗春だ。

宗春は幕府の財政を立て直した吉宗の手腕を評価はしたが、その後も同じ政策をとり続け、民を窮乏させた事を強く批判した。政道は生き物であり、臨機応変に最上の策を施すべきだと宗春は言う。 続きを読む

四十七人の刺客/池宮彰一郎

「—–随分と減ったものだ。」
吉良邸討ち入り前夜、首謀者の大石内蔵助は脱落者が続出した組の再編成に腐心していた。最後に残った浪士は四十七人。うち、戦力と成り得るのは30人程だった。そして吉良邸を守る相手の数は屈強の百余名だ。

大石内蔵助は敵方に対し巧みに謀略を仕掛け続けたが、実際に討ち入りが始まるのは残りの80ページあたりからだ。そこに至るまでの諜報戦が本書の大半を占める。 続きを読む

義経/司馬遼太郎

戦に長けた源義経と政治感覚に長けた源頼朝。この二人の対比が鮮やかな作品だ。まるでタイプの違う二人だが、共に生まれた時代は平家の全盛。肩身の狭い思いで若年期を送っていたが、やがて二人は歴史の表舞台に登場する。

従来の戦の常識を覆し、重要な局面で勝利を得続けた義経。平家を滅ぼし亡父の敵討ちに命を賭ける。義経の原動力にはそれが先立っていた。そしてもうひとつ。頼朝に勝利を喜んでもらうことだった。 続きを読む

会津白虎隊/星亮一

鳥羽・伏見、戊辰戦争において薩長軍と矛を交えた会津藩。その会津藩の中でも最も若い年齢(16~17歳)で構成された戦闘部隊、白虎隊を描いた小説。

治安の乱れた京都を統治すべく派遣された会津藩。一時は薩摩藩と同盟し、京都を占拠する長州藩を追い出すが、薩長同盟成立後は一転して朝敵の立場に追いやられてしまった。幼帝を奪い、擁立させることで大儀名文を得ようとした薩長軍の謀略だった。 続きを読む