イスラーム文化/井筒俊彦

イスラム社会は正統派といわれるアラブのスンニー派と、表面的な言語表現からさらに内的意味を探ろうとするイラン人を代表とするシーア派の二つに大別され、さらに各派のなかにも支流がある。

彼らの生活は聖典「コーラン」に基いており、巡礼に関する規則や日常生活の細部に至るまで、実にきめ細やかに規制されている。「コーラン」には神の言葉が記録されているといわれる。神の啓示を受けた預言者ムハンマドが、大体西暦610頃から20年間かけて編纂した。この20年間を二分し、前期10年をメッカ期、後期10年をメディナ期と呼んでいる。 続きを読む

インド哲学へのいざない/前田専學

インドで成立・発展した哲学・宗教思想の中から「ヴェーダ」、「ウパニシャッド」について述べられた一冊。

簡単に説明すると、紀元前1200年頃を中心に編纂された文献が「リグ・ヴェーダ」と呼ばれるもので、その他に「○○・ヴェーダ」と呼ばれるものが3種類存在する。それらを総称したものが「ヴェーダ」であり、その後の時代の変化に順応するように作成されたのが「ウパニシャッド」だ。 続きを読む

空海の思想について/梅原孟

著者は先ず、空海の思想を語る難しさを説いている。それを語るには著作を理解するだけでは不可能だからだ。そもそも、著作の内容を理解するだけでも普通の人々には無理であろう。それでもなお、難解なものに挑もうとする著者の姿勢、またそこから紡ぎ出されるであろう著者の空海観が冒頭から読者を引き付けるのだ。

空海の評価は明治以前、明治以後で2分される。呪術を行う密教が偉大な力の対象として崇められてきたが、近代化にともなう科学思想が従来の評価を覆した。時を経て、再び空海が見直されたがブーム化された風潮に著者は距離を置く。 続きを読む

啓発録/橋本左内/伴五十嗣郎 全訳注

藤田東湖、武田耕雲斉、川路聖謨や西郷隆盛など、幕末の大物たちが揃ってその才気、学問、見識に舌を巻いたと言われる橋本左内。その左内が15歳の時に起草したのが本書のタイトルでもある「啓発録」だ。

大別すると「稚心を去る」、「気を振ふ」、「志を立つ」、「学に勉む」、「交友を択ぶ」で構成され、その内容はまさに左内の人生の原点になっているようだ。自らを厳しく律しようとする強い姿勢が感じられるが、それにもかかわらずあまり堅苦しい感じがしなかった。視野が広く、変に偏った見識を持たなかったからだろう。 続きを読む