真夜中は別の顔/シドニィ・シェルダン

米空軍のエースでプレイボーイのラリー、知性と美貌を兼備えたキャサリン、女性の武器を最大限に利用してバイタリティ溢れる人生を送るノエル、そしてこの3人を取り巻く人々が繰り広げる、文字通り、手に汗握るサスペンスの傑作。

と、ここからいつも通りに大まかなあらすじを述べ、最後に一言感想を付け加えるつもりでいたのだが、本書に関してはそれをしない。一言でもストーリーに触れたら面白さが激減してしまいそうだからだ。 続きを読む

弥勒世/馳星周

舞台は1960年代の沖縄。地元住民に対して横暴な米兵とそれを黙認する米軍基地。さらに、本土復帰を巡り交錯する当時の人々の様々な思惑が描かれている。

主人公は伊波尚友。英字新聞社の記者だ。英語力と卓越した取材能力を買われ米国の諜報員として働き始める。反戦GIや反米活動家など、米国にとっての不穏分子の動向を報告するのが尚友の仕事だ。 続きを読む

夜光虫/馳星周

鳴り物入りでプロ野球入りした加倉が、肩の故障を機に退団。退団後、事業に手を染めるが失敗し、借金を抱えたまま台湾プロ野球界へ転身する。しかし、そこで八百長に手を染め始め、加倉の野球人としての人生も次第に変わり果てて行った。

同じく彼の作品である「不夜城」や「鎮魂歌」とは作風が異なるが、あえてこの「夜光虫」を薦めたい。 続きを読む

レイチェル・ウォレスを捜せ/ロバート・B・パーカー/菊地光 訳

私立探偵・スペンサーシリーズ。

今回の依頼人、レイチェル・ウォレスは女性解放論者であり、またレズビアンでもあった。彼女の著作物や他メディアを通した発言が米国社会に与えた影響は必ずしも全国民に歓迎されるものではなかった。性差別の実態やレズビアンであることによって受けたある種の差別が暴露されることで困惑する人々が存在していたのだ。そんな人たちから脅迫を受けた彼女がボディガードとして依頼したのがスペンサーだった。 続きを読む

老人と海/ヘミングウェイ

老いた猟師と大魚との闘い。

約3ヶ月間に渡り不漁が続いていた主人公。彼を手伝ってくれていた近所の少年も、運のない猟師に同船してはいけないと両親に反対され、本人の意思に反して老人から離れていった。そして、ひとり海に出た老人だったが、そこでかつて遭遇したことの無い巨大な魚に遭遇した。3日間に渡る死闘を繰り広げ、老人の体力は限界に達し、意識も朦朧としてきた。打ち消したはずの不安が再び甦る。思考が堂々巡りとなり、ひとり海に向かって大声で叫んでみる。何かに不安を覚えた時、そんな衝動に駆られた経験がある人間は決して少なくないだろう。 続きを読む