鳴り物入りでプロ野球入りした加倉が、肩の故障を機に退団。退団後、事業に手を染めるが失敗し、借金を抱えたまま台湾プロ野球界へ転身する。しかし、そこで八百長に手を染め始め、加倉の野球人としての人生も次第に変わり果てて行った。
同じく彼の作品である「不夜城」や「鎮魂歌」とは作風が異なるが、あえてこの「夜光虫」を薦めたい。
著者の4作目にあたる「漂流街」も私のお気に入りだが、比べるとやはり「夜光虫」のほうが面白い。この小説では、「不夜城」、「鎮魂歌」に比べ、より多くの場面で感情移入の余地があった。主人公、加倉に決して同調するわけではないが、読み応えは充分だ。
「しらを切れ、ごまかせ、丸め込め—悪魔の囁きはやむことがなかった。囁きはウィルスのようにおれの身体や脳細胞を蝕んでいった。」本文より。
読了:1998年 9月