疾走の夏/北方謙三

作家、北方謙三が一人のカメラマンを伴い、シカゴ~ニューオリンズ間ロングドライビングの旅に出た。本書はその時のことを綴ったエッセイ集だ。

当時、著者は免許を取りたてだったらしく、運転の動作一つ一つに対する彼の新鮮な喜びや苦悩(?)などについてを語ったくだりを読むと、私自身の初心者ドライバー時代が思い起こされ思わず笑みがこぼれた。著者の不慣れな運転に半ば脅える同乗カメラマンとの掛け合いトークもまた然り。また、著者はただ走ることを己自身の人生に例えている節が見受けられたが、それには私の心のどこか奥深くに訴えるものを感じた。 続きを読む

アメリカよ!あめりかよ!/落合信彦

著者の半生を描いた自伝的小説。高卒後,アメリカ・オルブライト大学に留学。1960年代の古き良きアメリカが,彼の留学体験をより劇的なものにしたようだ。卒業後オイルビジネスを始め、世界中を飛びまわる。彼の作品のいくつかは,この作品を原点にしているように思える。

学生時代の友人に薦められて読んだことがきっかけで、著者の本を好んで読むようになった。 続きを読む

イスラエル 兵役拒否者からの手紙/ペレツ・キドロン編著 田中好子訳

徴兵制で成り立つイスラエル軍。その目的は国防とされるが、隣国パレスチナへの入植、抑圧戦争が顕著だ。パレスチナ人が住むヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレムを軍事占領したイスラエル軍だが、民間人への攻撃が後を絶たない。占領は暴力の連鎖を生み出すばかりで、現状は国防とは程遠い。そんな実情に拒否反応を示した者たちが書いた手紙が綴られている。

彼らの手紙には、占領地域でのイスラエル軍の非人道的行為が如実に述べられており、また兵役拒否者それぞれ個人がいかなる理由で入隊を拒否しているのかが伺える。 続きを読む