イスラエル 兵役拒否者からの手紙/ペレツ・キドロン編著 田中好子訳

徴兵制で成り立つイスラエル軍。その目的は国防とされるが、隣国パレスチナへの入植、抑圧戦争が顕著だ。パレスチナ人が住むヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレムを軍事占領したイスラエル軍だが、民間人への攻撃が後を絶たない。占領は暴力の連鎖を生み出すばかりで、現状は国防とは程遠い。そんな実情に拒否反応を示した者たちが書いた手紙が綴られている。

彼らの手紙には、占領地域でのイスラエル軍の非人道的行為が如実に述べられており、また兵役拒否者それぞれ個人がいかなる理由で入隊を拒否しているのかが伺える。

しかし、兵役は国の法律であり、それを拒否すれば法律違反で投獄される。1度の投獄期間は30日程度だが、その間は国からの支給はない。兵役拒否は人道的で勇気のある選択だが、家族をはじめとする関係者たちは選択的拒否には必ずしも肯定的ではない。投獄中、または出所後の生活が不安定になるからだ。兵役拒否者たちが自らの良心を取るか、あるいは家族をはじめとする関係者たちへ与える生活の安定を取るか。そこに兵役拒否者たちの葛藤を思わざるを得ない。

占領地区から軍を撤退させ、パレスチナとの共存を図る。それこそがイスラエルにとって真の国防となるはずだ。彼らの手紙からはそんな確固たる意思が伝わってくる。

読了: 2004年10月

その後の2005年9月、イスラエルはカザ地区から完全撤退したようだ。他の入植地についても撤退が検討されるであろう。果たして、今後パレスチナとの和平は名実共に成立するのだろうか。